SNS向きでない長文転記場所

5年くらい前に他で公開した文章をほとぼりが冷めたころに転載したものです

アニメと観光について

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先週末、アニメ「けいおん!」の舞台となった豊郷小学校に行ってきましたが、色々考えさせられるものがあります。

豊郷小学校自体は、アニメを目的に建造されたものではありません。
その建物としての意義は
「日本に多大な影響を残したW. M. ヴォーリズ設計の建築の中でも、当時の形がほぼそのままで残っており、かつ一般公開されている希少な一品」
であることなのです。
観光資源に乏しい豊郷町にとっては、アニメ以前から地域活性化の中核として取り扱われていました。
(ほかにも、伊藤忠創業者の自宅跡などもありますが、地味といわざるをえません)。

しかし、現在の豊郷小学校は、「けいおん!」一色です。
作品の中で部室となっていた最上階は、アニメに登場したグッズ類がならび、家具などの配置もアニメで登場した状態を再現しています。
部室の隣にある舞台(本来は「合唱場」)では、コスプレした人がニコ生中継しつつアニメで使われた曲を演奏していました。
旧図書館にはアニメの登場キャラの等身大パネルを始めとして、大量のグッズ類が展示されています。
けいおん!」好きな人にとってはたまらないでしょうが、知らない人にとっては「なんじゃこりゃ?」状態でしょうね…。
豊郷小学校でこのような演出がなされるのは、かってにファンがやっているのではなく、管理者である豊郷町の方針によるものです。
いや、思い切った選択をしたものだと思いますよ。

しかし、地元にもアニメに嫌悪感を示す人がいるようですし、「けいおん!」依存一色から抜け出そうという努力も見えました。
豊郷中学校は最近公開された乙武さん主演の「だいじょうぶ3組」の舞台でもあります。
そこで、この映画を観光に活用しようとしたようですが、いかんせん知名度ではまったく「けいおん!」にはかないません。
先述の伊藤忠関連施設や、地元に伝わる「江州音頭」のポスターも見かけますが、どう考えても地味すぎます。
辛いところです。

ほかにも、アニメの舞台となったことを売り物としている観光地としては、

などなど、すぐに五指に余るくらいは思いつくのですが、すべてに共通するもうひとつの問題として、放映終了時直後からその集客力が低下し続けるということです。
これは、朝ドラとか大河ドラマの舞台となった観光地にもいえることです。
地方に行くと、20年前の大河ドラマの舞台となったことを未だに強調していたりして切なくなることがありますが、アニメでも全く同様です。
(琵琶湖周辺では、たくさんの「江」のぼりを今でも見ることができます。)
ナウルのグアノのように、いつか枯渇する資源でありながらも、現状効果が大きすぎるために、それに頼らざるを得ないという辛さが感じられます。

 写真は豊郷小学校のうさぎと亀の彫刻。
見事です。

(2013年9月4日)