SNS向きでない長文転記場所

5年くらい前に他で公開した文章をほとぼりが冷めたころに転載したものです

おっさん「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり」

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またしても時期を逸したお話です。
今年の9月にNHK公式ツイッターアカウントの初代担当者(通称「NHK_PR 1号」)がすでに退職していたことが発表されました。
そしてそれ以上に話題になったのは、この担当者が40代のおっさんだったことです。
たとえば、彼のNHK担当者としての最後のツイートをご参照ください。

「普通の子」「よろしくです」「ciao!!」などからにじみでる女性っぽさ。
確かにこれがおっさんかといわれると、なかなか見破るのは難しいところです。

こういうのは過去から例があって、一番有名なのは北村薫だと思います。
女子大生を主人公とした一人称小説により、覆面作家としてデビュー。
私は「空飛ぶ馬」くらいしか読んだことがないですが、確かに女性っぽいといわれるとそんな気もします。
まだ見ぬ女性作家を想像していた一部読者にとっては、作者が40歳のおっさんだと知ったときにはショックだったのかもしれません。

漫画家さんにはさらに、こういうことが多いです。
なぜなら彼らは後書きとか日記漫画で自分をキャラクター化することがあるのですが、そのキャラクターをかわいい女性にしてしまえば作者が女性であろうと思わせるには十分だからです。
例えば、近藤るるる篠房六郎はどちらも男性ですが、自画像が女性のキャラクターであるために、勘違いした読者もかなり多かったようです。
また、美水かがみの自画像は「にゃもー」なるかわいいネコの絵であったために、本人の写真が公開されるまでは多くの人が「勝手に」彼を女性だと思い込んでいたようです。

つらつら考えると、こういうのの起源はもしかしたら「土佐日記」なのかもしれないと思うようになりました。
「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。」
という最初の一文はあまりにも有名です。
紀貫之が、自分の侍女のふりをして書いた紀行文。
現代風に言い換えると、名家のおっさんが自分の家に仕えるメイドさんのふりをして、ときめきダイアリー(はぁと)をしたためてみた、というものでしょうか。
わざわざこんなめんどいことをした理由として、
「かな書きの柔らかい特性を活かした文学を志向したからだ」
見たいなことを言う人もいるようです。
個人的には、
「落ち着いた女性のふりをすることで、萌え豚どもをブヒブヒ言わせてやろう」
とかいう動機ではないかと思うのですが…。
平安時代の闇は深い。

17歳JKだけど今日中に1000いったら正体は38歳オヤジってことをばらす おもいっきり濁点

とかいうスレッドをみると、現代の闇も同じくらい深いのかもしれませんが。

(2014年11月21日)