SNS向きでない長文転記場所

5年くらい前に他で公開した文章をほとぼりが冷めたころに転載したものです

ノーベル賞と京都賞

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ノーベル賞関連のニュースがひと段落したら、今度は日本で最も権威ある賞のひとつである、京都賞の季節がやってきました。
今年の「思想・芸術部門」の受賞者は志村ふくみ。
一般にもとても人気のある染色作家で、いろんなところで個展やら企画展やらが開催されています。
私も数年前に滋賀県立近代美術館まで企画展を見に行ったことがあります。
そう、志村ふくみは滋賀県出身なのです。
着るための着物ではなく、完全に室内装飾用の着物がたくさん展示されていたのですが、正直いって芸術と縁の遠い私にはよくわかりませんでした…。

京都賞といえば、赤崎勇が受賞した際には、私も一般公開の講演を聞きに行きました。
赤碕勇は、窒化ガリウムを用いて世界ではじめて青色LEDを作り出したことで有名です。
青色LEDの材料である窒化ガリウムなどの化合物半導体は、まさに私の専門分野なのです。
そして、彼らのせいで私の今勤めている会社では、長年研究を続けてきたセレン化亜鉛という物質を諦めて、窒化ガリウムにシフトしたのでした。
Wikipedeaの「京都賞」の項を見ると

ノーベル賞を相補するような選出がなされている。」

とか書いてあります。
これは、創設者の稲盛和夫

「心の問題を研究することも非常に重要なので、京都賞にはノーベル賞にはない思想・芸術部門を設けた」

ということばを根拠としているのでしょうが、必ずしも正しくありません。
先にあげた赤碕勇が今年ノーベル賞を受賞したことからも明らかでしょう。
むしろ、京都賞はその分野の専門家のなかで評価が確立した時点で賞が授与されるのに対し、ノーベル賞は一般社会にインパクトを与えた時点で賞が与えられる、という違いがあるように思います。
医療によく用いられるMRI技術の発明者ラウターバーや、半導体へテロ結合を発見したアルフョーロフも、京都賞ノーベル賞の両方を受賞した超有名な科学者なのですが、かれらの受賞パターンもまさにこのとおりだと思います。

京都賞になくてノーベル賞にあるものとしては、平和賞が挙げられます。
今年は
日本国憲法9条を保持する日本国民」
が平和賞の候補となったそうですが、残念ながら賞を逃しました。
もし受賞していたら、史上最多の受賞者としても話題になったことでしょう。
もしかしたら、私自身もノーベル賞受賞者と名乗ってもよかったのでしょうか。
近年、憲法改正の議論は高まっており、ついには9条改正議論を題材にしたゲームが開発されるにいたりました。

もし受賞していたら、ノーベル賞を題材として宣伝活動ができただろうと思うと、本当に惜しいことです。

画像は、ノーベル文学賞受賞者莫言の頭像。
こちらによると、ネット上では「萌萌」と話題だそうですが…。

ノーベル文学賞受賞者「莫言」の頭像が上海でお披露目ネットでは「萌萌!」と評判 中国の反応は?: 雅日訳虎china−news

(2014年11月12日)