SNS向きでない長文転記場所

5年くらい前に他で公開した文章をほとぼりが冷めたころに転載したものです

「竹輪」は典型的な重箱読み

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ちょっと前に丹後半島に旅行に行ったときのことです。
伊根の舟屋めぐりの観光船案内所で、天橋立名物の焼きたて黒ちくわなるものを売っていました。
白人の観光客がカウンターのおばちゃんに、英語で
「これはナンデスカ?」
みたいなことを聞いていたのですが、残念ながらおばちゃんは英語力が不足していて「チクワ!チクワ!」というばかりでした。
日本ではありふれた食べ物ですが、外国人にとってはものめずらしいのでしょうね。
もし私に十分な英語力が備わっていたら、

「それは白身魚に少量の塩を加えた状態ですりつぶしたのちに棒に刺して焼いた食べ物ですよ。
じゃぱにーず・ばーむ・くーへん!
塩を加えることで魚肉中の塩溶性のタンパク質である筋原繊維フィラメントのミオシンとアクチンが溶け出して繊維状の巨大分子であるアクトミオシンが生成します。
このアクトミオシンの分子が網のように絡まりあうことで特有の弾力を持った食感となるのです。
昭和30年代に魚肉に砂糖とリン酸を加えることで冷凍変性を防ぐという、冷凍すり身が発明されたことにより、日本でも爆発的に生産量が増えたのですよ。
北太平洋の莫大なスケトウダラの漁業資源が利用できるようになったためです。
でもそのせいでもともとはご当地の魚で作られていたはずのちくわが日本全国で画一化されてしまったという弊害も指摘されています。
英語で『surimi』というと一般的にカニカマボコのことを言うのですが、実際は日本ではすりみはアクトミオシンによって弾力を発現させた魚系食物全般のことを言います。
そうそう、忍者ハットリ君に出てくる『獅子丸』というキャラクターの大好物がちくわであることから、広東語ではちくわのことを『獅子狗丸』と呼ぶのですよ。」

と、日本人なら誰でも知っているようなちくわ豆知識を説明してあげたのですが…。
ちくわを口にくわえて息をすると、半永久的にちくわ味の空気を吸うことができるなんてことは、100人いたら99人くらいはやったことがあるでしょう。
しかし、ちくわはその能力に比して注目されることの少ない食材であるように思います。

昔々のお話ですが、ファミコンのゲームに「ラサール石井チャイルズエスト」というのがありました。
これは当時売り出し中だったアイドルグループ「チャイルズ」を一流のスターにすることが目的なのですが、「チャイルズ」の一員に磯野貴理子がいたことからどのくらいむかしのゲームかがご推察いただけるでしょう。
「アイドルには絶対音感が必要!」とかいうことで、ゲーム内で「音感クイズ」というものが出題される場面がありました。
縦笛の「ミ・ファ・ファ・ファ・ミ・ラ」という音を聞かされて、日本語で何を言っているかあてろという恐ろしく無茶なものです。
答えは「ちくわのあな」。
なぜ何の脈絡もなくちくわなのか、よくわかりませんでしたが…。

わたしはおっさんなので世の中の流行には疎いのですが、噂では「ちくわパフェ」なるものがはやっていると聞きます。

ちくぱちくぱCKPCKP!

www.youtube.com

(2014年10月26日)