SNS向きでない長文転記場所

5年くらい前に他で公開した文章をほとぼりが冷めたころに転載したものです

【要約】会社いきたくないよう

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気の抜けたビールのようないまさらな話ですが、安倍首相が東京オリンピック誘致の際に

Some may have concerns about Fukushima.
Let me assure you, the situation is under control.

と言ったことが話題になりました。
夏休みに「愛と暴力の戦後とその後」という本を読んだのですが、著者の赤坂真理
「そんなことに言い切りはありえないと思うが、彼(安倍首相)はにこにこと言い切った。」
と、不信感をあらわにしていました。

この意見は、完全に正当なものだと思います。
私は小学校の小さい頃に、友達と遊ぶ約束をしておきながらすっぽかしてもめたときに、父親に
「できるかどうかわからん約束はするな!」
と怒られたのを覚えています。
まったく正しいことばであり、今の私も同意する内容です。

一方で、少なくとも私の携わっている仕事の場では、
「できるかどうかわからない約束をする」
のはごく当たり前のことです。
私はB to Bの製造業で働いているのですが、新規に開発した自社の製品を他社に売り込むに当っては次のようなステップが一般的です。

  1. 新しい製品を開発して、他社に性能をアピールする。
  2. サンプル品を少量試作して、他社に出荷する。
  3. サンプル品の性能を、他社が評価する。
  4. 性能が良好な場合、本格的な採用となって大量に出荷する。

1の時点では、実験室でなんとかかんとか1個とか数個しかできていないことが普通です。
1個だけ大事に大事に作ると性能がよくても、大量生産すると性能が確保できないなんてこともざらにあります。
しかし、1の時点で売り込みの際に
「大量生産も全く問題ないです!」
と言いきってしまうこともまた、普通になされていることです。
その結果、私の経験でも最初の1個はものすごくいいものが入荷されたのに、その後はぼろぼろになってえらい目に遭う、ということが発生しました。
日本メーカーはまだ誠実なほうですが、米国はこの傾向が酷いです。
中国は、も~っと!酷いです。

もう一例挙げると、こんな報道があります。
「川重、三井造船との統合白紙に 社長を解任 」

  http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD130QY_T10C13A6MM8000/ 

これは特殊な例ではなく、ぱっと思いつくだけでも似たような事例は、
三井化学住友化学
ビックカメラエディオン
田辺製薬大正製薬
・エアリキードと大阪酸素
というように、ずらずらと出てきます。
セガなんか、バンダイやらナムコやらとの経営統合の発表と撤回をくりかえしたことで有名です。
普通に考えればこんなおおごとを撤回するのは大失態であり、本当に合併が決まってから発表するもののように思えます。
しかし、会社的思考ではそれでは遅く、できるかどうかわからない時点でも発表すべきなのです。

働く側に目を向けると、私生活では完全に誠実で善良な人なのに、会社での仕事では超嘘つきで大風呂敷を広げるということを、多くの人は普通にやっています。
私も同様で、私生活と会社生活で二つの人格を使い分けており、私生活での行いのよさを、会社生活で相殺している気分です。

私は会社に行くのが嫌いです。
これは、仕事に不満があるというのも原因の一つですが、そもそも「会社に行く」ことが嫌いなのです。
最近思うのは、これは私生活人間から会社生活人間への、人格転換に伴う不安定に起因するのかもしれないということです。

舞台用語で「トレマ」という言葉があります。
これは舞台にダンサーや演者が上がる前の、これから何かが起きることが避けられないという緊張感、逃げ場が失われる不安がどんどん高まっていく感覚、逃げ出したいけど逃げられない状態のことです。
人によってはこれを「わくわくするような不安」とも表現しています。
まさに私が感じているのは、この「トレマ」の感覚なのかもしれません。
会社に行く直前に「会社行きたくない」感が頂点に達し、会社に行ってしまうとまあまあ安定、そして帰るときにはもう少し会社にいてもいいかなと思うこともある…。
舞台とよく似ています。

そしてこの「トレマ」は、急性の統合失調症による妄想を発症する直前に患者が体験する感覚にも例えられています。
確かに、この妙な不安感はなんだか頭がおかしくなってしまうような感覚でもあります。
会社にいる私は、ある意味頭がおかしい状態にあるのかもしれません。
今のところ、なんとかギリギリ働いている感じではありますが…。

(2014年10月25日)