図書館と電子書籍の関係
今日読んでいた小説で、図書館の司書と利用者が電子書籍の未来についてちょっと話している場面がありました。
そういえば、以前から作家さんの側からの図書館への批判として、図書館から本を無料で借りることができるために、本来なら売れるはずであった本が売れなくなってしまう、というものがあります。
新刊本ですらそうなのですから、旧作ではますますその傾向が強まるでしょう。
これまでは図書館が本を購入することを、作家の側が阻止することは事実上不可能だったのです。
しかし、もし今後電子書籍が普及したならば、「電子書籍のみで出版する」という方法で対抗することが可能になるかもしれません。
手元にある資料では電子書籍元年は2010年といわれているそうですが、今後の電子書籍普及のスピードは果たしてどの程度なのでしょうか?
新技術の普及については、2個のやや対照的な例を思い出します。
- 銀塩フィルム
私が就職活動をしていた2001年、デジカメはまだまだ普及途上でした。
化学系の私は銀塩フィルムを作っているメーカーに会社訪問をしたのですが、その場でデジカメへの置き換えによる銀塩フィルムの需要低下への対策について質問しました。
といっても、私自身がデジカメの普及を予想していたわけではなく、フィルムメーカーに見学したらデジカメのことでも聞いておけば受けがよかろう、と思っただけのことです。
社員さんからはあまりデジカメに対する危機感を感じませんでした。
これを見て私は、やはりデジカメの普及はまだまだ先のことなんだろうとやや安心したのを覚えています。
それから13年、コダックは一度倒産し、アグファは撤退、日本でもコニカのフィルムは消滅。
銀塩フィルムのカメラは、一部マニアや特殊用途でしか使用されなくなりました…。 - ハードディスク
2006年あたりからフラッシュメモリをはじめとするSSD価格が大幅に下落し、従来のハードディスクドライブは消滅するのではないかと盛んに言われたものです。
しかし2014年現在、SSDを上回るペースでハードディスクも低価格化、大容量化しており、寡占化がすすんだもののハードディスクが消滅する様子は今のところ見られていません。
課題であった読み取り速度はSSDに劣るものの、耐物理衝撃は大幅に改善し、SSDに対して読み書き回数の点で優れているために、信頼性を求める用途では当分ハードディスクが使用され続けるでしょう。
予想より早いスピードで消え去って言った銀塩フィルムと、意外に持ちこたえているハードディスク。
電子書籍に対して「紙の本」がどの程度持ちこたえるのか…個人的には、銀塩フィルムのように新刊本については急速に置き換えが進みそうに思うのですが。
(2014年6月8日)